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異世代ホームシェアの経験から

ドロシーさんは、一昨年
99歳10ヶ月で亡くなった。

100歳のお誕生日には、お祝いに行く、
と言っていたが、忙しくて行けそうにない。 
うう~ん、困ったな、と思っている間に
誕生日は過ぎ、ご息子夫婦から、
亡くなったとの連絡があった。

ドロシーさんの住まいは、
アメリカ東部のカナダと接する
バーモント州のケアハウス。 
いわゆる高齢者介護施設。

出会い

20年前、アメリカで仕事をしているとき、
ドロシーさんのお宅の2階を
間借りしていた。

当時の住まいは、マサチューセッツ州
アマーストという大学街。 
そういった背景からも、家族以外と
住まうことは、ごく普通のことだった。
わたしも、2年半の間に、シェアハウス、
コミュニティ、異世代ホームシェア、
と渡り歩いた。 

異世代ホームシエアって
ご大層なネーミングがあるみたいだけど、
要は間借り人と高齢の大家さん。 

家賃が格段に安い。 
大家さんは、一人暮らしより安心感がある。 
ウィンウィンの関係。
とはいえ、他人同士。 

シェアにとって大切なこと

わたしが思う、家族以外と住まうことの
キーポイントは、

1.言うべきことはお互いに、きちんと
  伝えること。
2.押し付けず、違いを楽しむこと。
3.お互いの干渉を避けること。
4.自立した関係であること


【言うべきことはお互いに、きちんと伝えること】

もともと、アメリカ東海岸北部の地域は、
南部や西部に比べると、
オープンマインドは低い。 
用心深いドロシーさんは、過去の経験から、
紹介つながりで、同居人を受け入れて
いたようだ。 
わたしは、青森出身の日本人から紹介してもらった。 

ドロシーさんとは、最初、
馬が合わなかった。

なにしろ、インターネット回線を引いたら、
そのせいで、電話が故障した、とか
言い出す始末。 
たまたま、不具合が同時期に起きた
だけでも、技術や理論を超えて、
とにかく、頑として譲らない。 
わたしも、おばあさんだから、と
黙認したりしない。

契約書もないから、最初に自分が
言いたいことを、喧嘩腰でもきちんと
伝えてくれていたのはいいことだった。 
こういう点はきちんとしないといけない、
気になるポイントが、わかったからだ。 

最初のうちは、台所を使うのは、
あまりいい顔をしなかった。
そのうち、わたしのために、
食料庫を買ってくれた。 
掃除が日課のきれい好きなので、
キッチンが汚れた状態なのが嫌だったのだ。
 
なぜ、使わせたくないのか、ということを
伝えておいてくれたから、
わたしも注意した。 

きちんと注意を守っていたから、
徐々に使わせてもらえるようになり、
最終的には、勝手に料理して
道具も使っていた。 
最初から、当たり前のようにキッチンを
使っていたら、わたしも注意深くは
ならなかった。 
だったら、最後まで道具や食器は
使わせてもらえなかったと思う。 

嫌なことは嫌という。 
貯めておかないのが大事。


【押し付けず、違いを楽しむこと】

食事を作って一緒に食べたり、
映画に行ったりした。 

サバやれんこんは、食べたことが
なかったらしいが、美味しい、といって
食べてくれた。 
お誕生日には、バースデーディナーも
作った。 青魚の料理をしたの!と
前住人に驚かれた。 ニオイがダメらしい。 
でも、わたしには、一言も言わなかった。 
後で聞くと、前住人が一般的なこととして
勝手にそう思っていただけらしいが、
慣れないニオイは違和感は
あっただろうと思う。

ドロシーさんは、当時でも80歳近い。 
日本からやってきたわたしに、いつも
夫が第二次世界大戦で徴兵されて、
結婚が遅れた、とウダウダ言われた。 
まぁ事実なんだろうから、仕方がない。 
もちろん、広島の原爆投下は正義だったと
信じて疑わない世代だ。

わたしが年代の違いや経験の違いからくる
自分の意見や立場を主張し続けたら、
うまく行かなかっただろうと思う。 

ドロシーさんも、台所は使うな、と
言ったら何が何でも使わせない、と
頑なだったら、美味しい(?)日本人の
手料理が食べられなかった。 
なにしろ、道具はすごいが、
豚肉をトースターで焼く以外の調理は
できなかったからね。 
「青みの魚は食べない」
「知らないものは試さない」で
通していたら・・・ 

チャレンジ精神、受け入れる気持ちが
なければ、珍しい経験もできないし、
一緒に食事もできない。


違うことは、楽しい。 
新たな発見がある。 
思わぬ喜びをくれる。
 
良いことばかりではない。 
だけど、どうしてそうするのか、が
わかれば、年齢や国境、育った環境を
超えて、少しずつ歩み寄れる


【お互いの干渉は避ける】

AirB&Bのような形態で、宿泊ではなく、
部屋を間貸ししている人は結構いた。 
少しでも家賃を浮かせるためだ。 
共同なので、冷蔵庫や食器棚や引き出し、
リビングの使い方まで、
お互いに決めると、あとは干渉しない。 


ドロシーさんは、高齢者で足腰も弱いから、
帰宅時には、ほぼ在宅。

一々、何があっただの、どうだっただの、
聞いてこない。
クロスパズルが趣味だから、
ロッキングチェアに揺られて、解いている。
おそらく、聞き耳をたててはいるが、
知らん顔。 
夜遅くなるときは、さっさと寝ている。
でも、リビングの明かりは
つけておいてくれる。
で、夜中にトイレに行く時に、明かりの
チェックはしてるんだよね、たぶん。

シェアったって、大家さんちで、こちらは
間借り人なので、横一列の関係性ではない。
とくに高齢の場合は、いままでの暮らしが
一変するようなこと、
不安になるようなことは、
避けたいから、心配させてはいけない。

干渉と心配は別だ。 


【自立した関係であること】

高齢者の大家さんに間借りする場合、
家賃が安価な分は、何らかの緊急時の
手助けを、本人も家族も期待している。 

でも、間借り人がいないと、
お世話する人がいなくて生活に困る、
という関係ではだめだ。 


ドロシーさんは、高齢で持病がたくさん
あった。 さらには、日曜日には、
必ずおしゃれして、教会に行く。

古いアメリカ車に乗っていたが、とにかく
故障が多い。 寒い地域でもあり、
頻繁に乗らないから、エンジンがかからず、
教会まで送っていったことも多い。 

夜中に何度か、病院まで乗せていったこともある。救急車は、アメリカでは有料だ。 
しかも帰りがないから、嫌だという。
(当たり前やん) 
ドロシーさんは気丈だから、頼むのは嫌。 
なので、こちらから、送りましょうか、
と言う。
 
教会は、車が故障すれば休めばいいし、
他の人に頼めば連れて行ってもらえる。 
買い物も、2週間に一度は、息子夫婦が
遠路はるばるやってきて、連れて行って
くれる。 なので、わたしがいなくても、
なんとでもなる。

全く頼りきってしまうのなら、
わたしは、間借り人ではなくて、
住み込みの雇われ人だ。
それならそれで、きちんと契約しなければ
ならない。

気丈なのもあるが、約束ごとではないので、
ドロシーさんは頼まない。
わたしも、義務はないから、自分で
優先順位を決められる。
間借り人の中には、頼まれないとやらない。 
頼まれても、契約にない、聞いてない、と
言ったりする人もいるらしい。 

介護人でも、雇用関係があるわけでも
ないから、どちらか一方が頼る関係性では、
成立しない。 しかし、困っていたら、
助け合う、という、普通の気遣い、
思いやりは、信頼にもつながる。 

学生とのシェアハウスのときも、
日本人ということで、契約はスムーズ
だった。 それほど、きちんとした痕跡を
残してくれている先達に感謝すると同時に、
自分も次につなげなければ、と思った次第。

自立と気遣いも、また別。

高齢者の気持ち

そんなこんなで、自己主張ばっかりの
若者とのシェアより、気楽だった。 
ドロシーさんも、きちんと言いたいことは
言うから、喧嘩もするけど、楽しかった。


高齢者は、お金のこともあるけど、
なにより寂しいことが大きい。
だんだん年をとっていくと、なんでも
思うようにいかない。
不安と寂しさが募る。 
若い人がいてくれるだけで、元気を貰える。
ウキウキワクワクする。

だから、ちょっと、余計に手出し
するかもしれない。
嬉しいから。


帰国後も交流は続き、やがて
ドロシーさんは、ご子息の自宅近くの 
高齢者介護施設に入居した。 
そこにも一度、訪ねていった。 

まとめ

人と人との距離感を肌で知るには、
シェアハウスやシェアルーム、間借りでも、
居候でも、自分に合ったタイプで、
家族以外の人とひとつ屋根の下で
生活をする経験はよさそうに思う。 

核家族で自分ちのことしか知らないと、
社会に出ても、家庭をもっても、
距離のとり方がわからない。

過干渉でも、依存していても、
子供や孫なら我慢もしてくれるが、
他人では、鬱陶しがられて敬遠される。

とくに、日本は、あいまいな部分を
話し合わない事が多い。
どちらかが、我慢をする。 
不満は蓄積する。
そういう関係は、長くは続かない。 

出会いは変化をもたらせてくれる。
変わることが嫌な人には、シェアは不向き。

だけど変化がないところに、未来はない。
未来がないところに、喜びはない。

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